高齢者の転倒を防ぐフローリング滑り止め|ワックスとオイルの違い
高齢者の転倒と床の滑り|まず知っておきたいこと
対策を選ぶ前に、「どこで・なぜ転びやすいのか」を知っておくと、力を入れるべき場所が見えてきます。過度に不安になるのではなく、事実を押さえて冷静に備えましょう。
① 転倒が起きやすいのは「居間・廊下」などの生活空間
意外に思われるかもしれませんが、高齢者の転倒は外出先よりも住み慣れた自宅の中で多く起きています。消費者庁の調査(令和5年度)では、屋内でヒヤリとした・ケガをした場所として「居間」が最も多く、次いで「寝室」「廊下」「玄関」と続きます。つまり、毎日を過ごす何気ない生活空間こそ対策の優先度が高い場所です。
特にフローリングが続く廊下やリビングは、スリッパや靴下で歩く機会が多く、滑りが直接転倒につながりやすい場所です。まずはご家族がよく歩く動線の床から見直すと、効率よく安全性を高められます。
② 加齢による「すり足」とわずかな滑りの関係
年齢を重ねると足が上がりにくくなり、すり足気味の歩行になりやすくなります。すり足は床とスリッパ・靴下の接地が浅くなるため、ほんの少しの滑りでもバランスを崩しやすいという特徴があります。「昔は気にならなかった床が、最近すべりやすく感じる」という場合、床が変わったというより歩き方や筋力の変化が影響していることも少なくありません。
同じように「加齢で滑りやすくなる」現象は、実は人だけの問題ではありません。筋力の低下で足腰が不安定になり床で滑りやすくなるのは、高齢のペットにも共通します。加齢と滑りの関係は、こちらでも解説しています。
▶ 関連記事:愛犬が床で滑る原因と身体的な要因とは?
なお、転倒防止は床の滑り対策だけでなく、段差の解消・手すり・履物・適度な運動など複数の対策を組み合わせるのが基本です。住まい全体の転倒防止を俯瞰したい方は、こちらもあわせてご覧ください。
フローリング滑り止めワックスの効果と「限界」
「まずは手軽に」と考えたとき、多くの方が候補に挙げるのが滑り止めワックスです。実際に効果はありますが、高齢者宅で長く使ううえで知っておきたい「限界」もあります。メリットと注意点の両方を確認しておきましょう。
① ワックスで滑りにくくなる仕組み
滑り止めワックスは、床の表面に薄い皮膜をつくり、摩擦を高めて滑りにくくするタイプの製品です。市販品も多く、DIYで塗れて費用を抑えやすいのが魅力です。フローリングの滑りが気になり始めた段階で、まず試しやすい対策と言えます。一時的に滑りを抑えたい、来客前に整えたいといった短期的な用途では手軽で有効な選択肢です。
② 剥がれ・白化と、定期的な「塗り直し」の手間
一方で、ワックスは表面に膜をつくる性質上、歩行や摩耗で少しずつ剥がれていきます。剥がれた部分は白くくすんだり(白化)、まだらになったりして、見た目が損なわれるだけでなく、部分的に滑りやすい場所が残ることもあります。効果を保つには、数か月〜1年ごとを目安に塗り直しを繰り返す必要があります。
さらに、古いワックスの上から重ね塗りを続けると、膜が厚くなってくすみや段差の原因になり、いずれは剥離剤で一度すべて剥がしてから塗り直す、という手間も発生します。「塗る→剥がれる→また塗る」というサイクルが続くのがワックスの弱点です。
③ 高齢者宅で気をつけたいワックスの注意点
高齢のご家族が暮らす住まいでは、この定期メンテナンスの負担が特に問題になりがちです。塗り直しのたびに家具を動かし、床にかがんで作業するのは、ご本人にもご家族にも大きな負担です。作業を先延ばしにするうちに効果が切れ、滑りやすい状態に逆戻りしてしまうこともあります。剥がれかけたワックスやめくれ自体が、つまずきの原因になることもあります。
「一度塗れば長く安心」とはいきにくい——これが、手軽さの裏側にあるワックスの限界です。介護・福祉施設のようにメンテナンスの手が回りにくい環境でも同様の課題があり、施設での対策はこちらで詳しく比較しています。
滑り止めオイルの持続性|ワックスとの違い【比較表】
「塗り直しの手間をかけずに、長く滑りにくい床を保ちたい」——そんな方に向いているのが滑り止めオイルです。ワックスとは滑りにくくする仕組みが根本的に異なります。
① 木に浸透して摩擦を高める(表面に膜をつくらない)
滑り止めオイルは、表面に皮膜をつくるのではなく、木の内部に浸透して床本来の摩擦を高めるタイプです。膜をつくらないため、剥がれて白化したり、まだらになったりしにくいのが大きな違いです。無垢材の手触りや調湿性、木の質感をそのまま保てるのも、オイルならではの利点です。
② 実測データで見る滑り止め効果と持続期間
伊勢通の滑り止めオイル「グリップオイル」は、表面性測定機による実測で、塗装前と比べて摩擦係数が大きく向上することを確認しています。たとえばオイル仕上げのナラ材では、施工前0.311が施工後0.827(約2.7倍)と、数値が大きく(=滑りにくく)なりました。第三者機関・名古屋市工業研究所の測定でも、オイル塗装の床と比べて摩擦力が約2倍という結果が出ています(数値が大きいほど滑りにくい)。
| 床の仕上げ・施工 | 施工前 | グリップオイル施工後 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| オイル仕上げ+速乾タイプ | 0.311 | 0.827 | 約2.7倍 |
| オイル仕上げ+白木用 | 0.311 | 0.451 | 約1.5倍 |
| ウレタン仕上げ+下塗り材+速乾 | 0.290 | 0.563 | 約1.9倍 |
※摩擦係数=数値が大きいほど滑りにくい。測定:トライボギア 表面性測定機 TYPE:14(2026年6月1日 当社測定・ナラ材)。
効果の持続は使用状況によりますが、目安として2年程度。ワックスのように数か月ごとの塗り直しを前提としないため、メンテナンスの負担を大きく減らせます。高齢のご家族が暮らす住まいのように頻繁な作業が難しい環境ほど、この持続性が効いてきます。
③ ワックスとオイルの比較表
ここまでの違いを整理すると、次のようになります。「手軽さ」か「持続性・質感」か、重視する点で選び方が変わります。
| 比較項目 | 滑り止めワックス | 滑り止めオイル |
|---|---|---|
| 滑りにくくする仕組み | 表面に膜をつくる | 木に浸透して摩擦を高める |
| 効果の持続 | 数か月〜1年(塗り直し前提) | 目安2年程度 |
| メンテナンスの手間 | 定期的な塗り直し・剥離が必要 | 頻度が少なく負担が小さい |
| 木の質感・調湿性 | 膜で覆うため変わることがある | 保ったまま滑り止めできる |
| 剥がれ・白化 | 起きやすい | 起きにくい |
| 手軽さ・初期費用 | 手軽・安価 | ひと手間かかるが長持ち |
家庭の状況別|ワックスとオイルどちらを選ぶ?
どちらが「正解」ということはなく、ご家庭の状況に合った方を選ぶのが大切です。判断の目安をまとめます。
ワックスが向いているのは、賃貸などで原状回復に配慮したい場合や、「まず今すぐ・低コストで滑りを抑えたい」という短期・応急の場合です。定期的な塗り直しを負担なく続けられる環境であれば、有効な選択肢になります。
オイルが向いているのは、無垢フローリングやオイル塗装の床で木の質感を大切にしたい場合、そして塗り直しの手間をできるだけ減らして長く安心を保ちたい場合です。高齢のご家族が長く暮らす持ち家では、メンテナンス負担の小ささが日々の安心につながります。
なお、ご自宅の床がウレタン塗装(表面に膜があるツルッとしたタイプ)か、無垢・オイル塗装かによって、オイルの塗り方が変わります。無垢・オイル塗装の床にはそのまま塗れますが、ウレタン塗装の床には専用の下塗り材を使います。床の種類が分からない場合は、写真をお送りいただければ判断のお手伝いをします。
「自分で塗るのは自信がない」「面積が広い」という場合は、出張塗装・研磨という選択肢もあります。グリップオイルを開発した伊勢通の担当者が関西〜関東へうかがい、毎月2〜3件の限定でお受けしています。お写真を送っていただくだけで無料お見積もりができます。
介護保険・住宅改修の対象になる?費用面のヒント
床の滑り止めを検討する際、「介護保険は使えないの?」と気になる方も多いはずです。要点だけ簡単に触れておきます。
要支援・要介護の認定を受けている方は、介護保険の住宅改修費(支給限度基準額20万円・原則1〜3割負担)を利用できる場合があります。その対象項目のひとつに「滑りの防止及び移動の円滑化等のための床材の変更」が含まれており、床の滑り対策が関わる余地があります。ただし、オイルやワックスの塗布が「床材の変更」に該当するかどうかは、市区町村やケアマネジャーの判断によるため、利用を検討する場合は事前に担当のケアマネジャー・自治体窓口に確認するのが確実です。
保険の対象になるかにかかわらず、まずは費用を抑えて小さく試すという進め方もあります。滑り止めオイルは、いきなり全体に塗らず、サンプルで目立たない場所に試してから範囲を広げることができます。ご予算や住まいの状況に合わせて、無理のない形から始めましょう。
滑り止めオイル「グリップオイル」とは?
「グリップオイル」は、無垢床の質感を活かしたまま適度な摩擦を生み出し、滑りにくい床環境を整えるフローリング専用の自然オイル塗料です。
天然由来の植物オイルが主成分

グリップオイルの3つの特長
名古屋市工業研究所の測定で、オイル塗装の無垢床の最大静摩擦係数が約2.07倍に。植物油主成分で調湿性能と手触りを保ち、約4時間の乾燥で歩行できる、無垢床にやさしい滑り止めオイルです。
① 摩擦力 約2倍 第三者機関・名古屋市工業研究所で測定。オイル塗装の無垢床で約2.07倍に。
② 自然素材で安心 植物油が主成分。木に浸透し調湿性能と手触りを保ちます。
③ 約4時間で歩行可 コテ刷毛で塗装、拭き取り不要。無垢床なら他社塗料の上からも塗装可。第三者機関による摩擦力データ
滑りにくさは名古屋市工業研究所の実測で確認済み。無垢ナラ(オイル塗装)で摩擦力が約2倍に。
| 樹種・仕上げ | 塗装前 | グリップオイル塗装後 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 無垢ナラ(オイル塗装) | 136gf | 281.9gf | 約2.07倍 |
| 無垢ヒノキ(無塗装) | 165.4gf | 229.7gf | 約1.39倍 |
※gf(グラム重)=摩擦力の単位。数値が大きいほど滑りにくい。/測定:名古屋市工業研究所
まとめ|まず知って、質感を保つ根本対策を
高齢のご家族の転倒対策は、過度に怖がるよりも、リスクを正しく知って、生活動線の床から順に備えることが大切です。フローリングの滑り止めには、手軽なワックスと、木に浸透するオイルという選択肢があります。
ワックスは低コストで手軽に始められる一方、剥がれや定期的な塗り直しという手間が続きます。オイルはひと手間かかりますが、木の質感を保ったまま滑りにくさが長く続き、メンテナンスの負担を大きく減らせます。賃貸や短期の応急にはワックス、木の質感を大切にしたい持ち家や長期の安心にはオイルと、状況で選び分けるのがおすすめです。伊勢通では、床の状態に合わせた滑り止めのご相談を承っています。
床の仕上げが分からないときのご相談の流れ
「オイルかウレタンか分からない」という方も大丈夫。床の写真をお送りいただければ、仕上げの種類と最適な施工方法をご案内します。
- 1)床の状態をメールで相談する(写真を送ると仕上げの判断がスムーズです)
- 2)サンプルで目立たない場所に試す
- 3)必要に応じて本施工を検討する
滑り止めオイルのサンプルについて
サンプルは「速乾タイプ」「白木用」「ウレタン塗装専用下塗り材」の3種類をご用意。目立たない場所で滑り止め効果と質感をお試しいただけます。



資料ダウンロード・商品ラインナップ
商品ラインナップ・専用カタログ・SDSをまとめてご紹介します。
グリップオイルの商品ラインナップ
無垢床専用の「速乾タイプ」、白木の質感を活かす「白木用」、ウレタン塗装床に使う「専用下塗り材」の3種類。床の仕上げや用途に合わせてお選びいただけます。
速乾タイプ(3分艶仕上げ) 無垢床専用・速乾タイプ。 100ml 6,600円/0.25L 10,890円/0.5L 16,335円/1L 21,780円 詳細を見る →
白木用(全艶消しマット仕上げ) 無垢床専用・白木の質感を活かす。 100ml 6,050円/0.5L 14,440円/1L 19,250円 詳細を見る →
ウレタン塗装専用 下塗り材 ウレタン塗装床にグリップオイルを塗る前の下塗り材。 1L 19,800円 詳細を見る →Grip oil/滑り止めオイル 資料ダウンロード
製品の概要・施工方法・メンテナンス方法をまとめたカタログと、安全にお使いいただくための製品安全データシート(SDS)をご用意しています。
よくあるご質問(FAQ)
高齢者の転倒対策とフローリングの滑り止めについて、よくいただく質問をまとめました。

